阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第28号
貞光町の祭礼行事

民族班 田岡隆夫

1.例祭及び祭礼行事一覧

 

2.主な神社の祭礼行事
 1  熊野神社
 10月19日例祭当日、神輿渡御と屋台の町内巡りがある。部落単位に交代してそれぞれ神輿当家、屋台当屋を定める。当家となった家の門先には神迎えのための聖域を設けるために、太い丸竹の矢来が組まれる。神職は、そこに神の降神を取り持ち祭る。祭礼の後、当家の隣家が当家に集まって直会をする習慣となっている。


 2  辻の八坂神社
 旧正月7日、鎮疫祭(お七日(おなのか)ともいう)がある。年頭に悪疫流行を鎮めるためのお祭りとして知られ、氏子はもとより他町村から崇敬者の参拝がある。町内一帯に〆縄が張りめぐらされ、境内に露店が多く出て終日参拝客で賑わう。茅縄(ちなわ)(茅で作った〆縄)を頭に頂いて帰る習わしがある。
 旧6月7日が例祭でいわゆる祇園(ぎおん)まつりとして有名。昔から悪病除けの神として評判が高いので、茅縄(ちなわ)をうけて健康安全を祈願する崇敬者が多い。町の商工会の手で町内一帯に〆縄が張りめぐらされ、境内には出店が立ち並び、商工会主催でカラオケ大会や花火大会が催され大変にぎわう。(神輿渡御は戦時中に神輿を供出し中断している)
 旧8月1日(八朔(はっさく))に湯立祭がある。悪病防除を祈願して朝・昼・夕三座の神道湯釜を炊く。当社祭神のほか、造化三神、三元五行の神々を勧請して祈り、結願の湯を信者に頒つ。当夜は神への奉納として廻り踊り(ごまおどり)と音頭の競演(音頭せり大会)があり、深夜まで踊り楽しむ。
 3  松尾神社
 当社は京都松尾神社の分霊をまつり、酒造の神として県内酒造家の尊信を受けている。旧3月13日の春祭には、4年めごとに「天岩戸神楽(あめのいわとかぐら)」が奉納されてきた。この地方に古くから伝わる忌部神楽の一つで、天岩戸の神話を主題とした十種の舞楽を神主5人、巫女2人が3時間にわたり熱演する。近年とだえがちであったこの神楽を地元の忌部研究会が中心になって復活し、伝承していこうと力を入れている。
 4  宮内神社
 10月29日例祭の神幸式は昔通り総代、当家が各種のご神宝を奉持して神輿に供奉し、その行列は壮観である。神慮をなぐさめる祭礼の姫舞(4人の童女が奏楽に合わせて舞う)もおくゆかしい。

 

3.おわりに
 過疎化の進行とともに神輿や屋台が出せなくなったお宮が当地でもいくつかあるが、上記報告のように町民の熱意で祭礼の伝統はうけつがれ、また甦えりつつある。町民の連帯感を培い高める場として祭礼行事の果たす役割は大変大きいと思う。


徳島県立図書館