阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第30号
鴨島町の野鳥

鳥類班

  増谷正幸・大久保良二・大村龍一・

  笠井好博・片山宏・神原寛・郡和治・

  佐條啓史・敷島義美・曽良寛武・

  東条秀徳・新居正利・西岡桂子・

  松井勉・吉田和人

1.はじめに
 日本野鳥の会、徳島県支部は、鳥類班として総合学術調査に参加し、鴨島町に生息する野生鳥類(野鳥)の分布・生息数・繁殖状況などを解明することを目的として調査を行なった。
 今回の調査の結果、山地の森林では、生息する野鳥がかなり多種多様であることがわかった。鴨島町の山林は大部分がアカマツの二次林で、最高点は586mと余り高くない。しかし、谷沿いには広葉樹の自然林が残り、スギなどの人工林面積は、他の町村に比べれば少ない。このことが野鳥にとって好ましい生息条件をもたらしているものと考えられる。
 また、平野部の河川とその流域の湿性草地・アシ原などでは、水辺や湿地に生息する野鳥の種類が多かった。しかし、現在各地で、河川改修・護岸工事、宅地・工場用地の造成、埋立てなどが行なわれており、野鳥や他の野生動物の生息環境は急速に悪化しつつある。

 

 2.調査地区と調査方法
 山地の森林地帯として、1 三谷地区の南方、2 赤坂〜長戸地区、平野部からは、3 敷地〜飯尾、4 宮間〜天神地区、合計4か所の地域を選び出して、ライン・センサス法ににる調査を行った。(図1)


 ライン・センサス法とは、調査コ−スを時速2kmで歩行し、調査者から半径25m以内で観察された鳥の種類と個体数をすべて記録していくものである。調査コースの全長は、1 は2km、2 〜4 は1kmとした。
 上記の4か所以外の地域でも必要に応じて調査を行なった。

 

 3.調査結果
 ライン・センサス法により得られた野鳥の出現個体数に、各種類ごとの鳥の体重を掛けたものの総和を、野鳥の生物現存量という。それを1平方キロメートルあたりに換算したものが図2である。これから、1平方キロメートルあたりの生息野鳥のおよその総重量がわかる。


 また、各地区別の生物現存量の種類別の割合を図3〜図6に示した。これにより、その地域の自然環境と生息鳥類の相互関係(現在の自然環境にどの野鳥が適応しているか、または、どの種類の野鳥がその地域で優占的な生態的地位を獲得しているか)のおおよそがわかる。
 これらの図を適宜参照しながら、地区別に調査結果の考察を行なってみたい。
(1)三谷南方の山地
  a)留鳥として生息・繁殖するもの……トビ・キジバト・アオゲラ・コゲラ・キセキレイ・ヒヨドリ・モズ・カワガラス・ウグイス・エナガ・ヤマガラ・シジュウカラ・メジロ・ホオジロ・カワラヒワ・カケス・ハシブトガラス・コジュケイ
  b)夏鳥として渡来し繁殖するもの……ミゾゴイ・ハチクマ・サシバ・ホトトギス・サンショウクイ・ヤブサメ・センダイムシクイ・キビタキ・オオルリ・コサメビタキ・サンコウチョウ
  c)繁殖している可能性のあるもの……ツミ・ミソサザイ・トラツグミ・ヒガラ・イカル
  d)冬鳥として渡来するもの……ルリビタキ・ジョウビタキ・シロハラ・ツグミ・キクイタダキ・ミヤマホオジロ・アオジ・ウソなど


 このように、当地に生息する野鳥は多種多様である。これは、この地域の森林が、1 アカマツの二次林が主であるが、所々に広葉樹が混じっていたり、低木層に広葉樹がよく茂っている所もあるなど、自然林への回復途上にある部分が多いこと、2 谷沿いには、広葉樹のよく茂った自然林が残存すること、3 スギ・ヒノキなどの人工林が現在は比較的少ないこと、などによるものであると考えられる。
 しかし、道路工事・農地開拓・各種施設建設などの開発や、人工造林がしだいに進みつつある。これらが行き過ぎて行なわれると、現在の豊かな自然環境は急速に失われてしまうと懸念される。
(2)赤坂〜長戸地区の山地
  a)留鳥として生息・繁殖するもの……コジュケイ・キジバト・フクロウ・コゲラ・ヒヨドリ・モズ・カワガラス・ウグイス・エナガ・ヒガラ・ヤマガラ・シジュウカラ・メジロ・ホオジロ・カワラヒワ・イカル・カケス・ハシブトガラス
  b)夏鳥として渡来し繁殖するもの……サシバ・ホトトギス・ヤブサメ・センダイムシクイ・キビタキ・オオルリ
  c)繁殖している可能性のあるもの……アオバト・ツツドリ
  d)冬鳥又は旅鳥として渡来するもの……ルリビタキ・ジョウビタキ・シロハラ・キクイタダキ・カシラダカ・ミヤマホオジロ・アオジ・クロジ・シメ・マヒワなど


 この地域も、三谷南方山地と同様、生息する野鳥はかなり多種多様であり、自然環境は割合良好であるといえる。しかし、、ハシブトガラスの占める割合が高いのが注目される。本種は自然環境の変化に対する適応力が強く、開発などにより自然が破壊されると、しだいに進出して来る傾向がある。したがってこの地域の自然環境もしだいに悪化しつつあるといえる。

(3)敷地〜飯尾地区
 この地域は山ぎわの水田・湿田地帯で、所々には、アシやガマの茂る低湿地も存在する。そのため、河川・沼沢地・低湿地帯に生息する野鳥の種類も多かった。しかし現在は、宅地造成・河川改修・農地改良事業が急速に進んで、生息地が少なくなったため、コサギ・バン・ヒクイナ・ヨシゴイ・タシギ・カワセミなどのような湿地に生息する野鳥は少なくなっている。代わって、スズメ・ハシブトガラス・ムクドリ・キジバト・ヒバリ・カシラダカ・カワラヒワ・ツグミなどのように自然環境の変化に対する適応力の強い野鳥が優占してきている。


(4)宮間〜天神地区
 江川流域の農耕地帯である。江川流域のうち、河川改修・護岸工事のされていない、自然状態に近い河川とその週辺の湿地では、カイツブリ・バン・カルガモ・シギ類(クサシギ・イソシギ・タシギなど)・サギ類などが数多く生息する。しかし、江川は改修工事が進みつつあり、これらの野鳥の生息に不可欠な低湿地帯が急速に失なわれつつある。逆にドバトがかなり優占してきている。本種は中央〜西アジア原産で、現在各地で都市化に比例して数を増しつつある。


 いわば、自然環境の悪化を示すバロメーターといえる。農作物を荒してよく問題になるのもこのドバトである。
(5)特記すべき種について
1  ミゾゴイ
 およそカラス大のサギ類。夏鳥として渡来し、他のサギ類とは異なって、山地の渓流沿いの広葉樹の多いよく茂った林に生息する。夜間活動し、サワガニ・カエル・昆虫類を捕食する。今回の調査で、三谷南方山地の渓流で繁殖が確認された。現在県下各地で、開発や自然林の伐採により、生息地が失われつつあるので、この記録は貴重である。


2  フクロウ
 およそカラス大。県下に生息するフクロウ類中最大。山麓・低山の大木や、古木の残る林に生息し、天然の樹洞に営巣する。現在は、開発などにより極めて少なくなっている。生息地の自然環境の保護が早急に必要である。
3  カワガラス
 山地の渓流に生息し留鳥。スズメ目の鳥の中では、水中に完全に潜ることのできる唯一の種類。水生昆虫を捕食する。三谷南方の渓流は、吉野川南岸水系中、最も東側に位置する生息地であり、貴重である。
4  カルガモ
 流れのゆるやかな河川流域の湿地に生息する。西南日本で繁殖するカモ類は本種だけで、その意味では貴重である。しかし、河川改修・護岸工事、宅地・工場用地造成、埋め立てなどにより、生息適地が失われつつあるので、繁殖期にその姿を見ることはしだいに少なくなってきている。

 

4.まとめと提言
 野鳥は、自然環境の良し悪しを示すバロメーターである。ある地域に生息する野鳥を年間を通して調べることによって、その地域の自然環境の自然度の概略がわかる。
 自然度の高い地域(山地では自然林が広範囲に保たれている所、平野部では、河川・湖沼等水系の周辺にアシ原・湿性草地が残る所)では、自然環境が複雑・多様であり、生息する野生動物の種類も多い。生態系のバランスがよく保たれているため、ある特定の動物種のみが異常に大発生するということはない。
 ところが、植林・道路工事・農地開拓・工業開発・宅地造成・河川改修護岸工事などにより自然が破壊されたり、農薬・化学肥料が大量に使用されると、生息できる野生動物の種類が極めて少なくなる。生態系のバランスが崩れて不安定になるため、特定の害虫が一時に大発生する恐れが出てくる。
 このことからも明らかなように、農業や林業の健全な発展のためには、すべてを人工化してしまうのでなく、むしろ周辺により自然度の高い環境を積極的に保護・復元させることが必要である。
 また、本当の意味における「自然」は、そこに住む人々の精神生活を豊かにし、地域の文化の発展や、次代を担う青少年の心身の健全な育成にとっても必要不可欠なものである。
 鴨島町の自然環境は、いまなお豊かである場所も少なくないとはいえ、しだいに悪化しつつある地域が多くなっている。そこで、貴重な自然を保護し、自然と人間生活の調和を図るために、次の5点の提案をしたい。
 1  針葉樹の造林面積は、あまり増やしすぎないようにし、造林する場合には、小面積に止め、谷沿いの広葉樹林は伐採しない。
 2  開発を行なう際は、事前に専門家による綿密な調査を行ない、野生動植物の重要な生息地域であることが判明した場合、計画を縮少・変更または中止する。
 3  河川改修・護岸工事は必要最小限なもののみに止め、どうしても工事を行う場合には、一部に自然状態の河川を残したり、遊水地帯を設けるなど、十分な配慮をする。
 4  神社の森の保護に努め、その地域の潜在自然植生に基づいた後継樹育成を図る。


 5  鴨島町内から、山地の森林、平野部の河川周辺水系の各々について、自然環境が豊かで野生動物の良好な生息地を、それぞれ最低1か所以上選び出し、自然環境保全地区として一切の開発を禁止する。そして、その一部を利用して自然観察施設を設け、一般町民や学校の生徒が、本当の自然に親しみ、そのしくみを理解するのに役立てるようにする。

 

5.鴨島町野鳥目録
 1983年2月〜1984年1月の調査で記録された種類は、95種類であった。以下にその種名と主な生息環境を掲げる。なお、具体的な観察記録は、繁殖確認例・貴重種・稀少種など、重要と思われるものを示してある。
 

カイツブリ目 Order PODICIPEDIFORMES
 カイツブリ科 Family PODICIPITIDAE
1.カイツブリ Podiceps ruficollis
  留鳥。流れのゆるやかな自然状態の河川・湖沼に生息。
 1983.7.16 天神・江川(標高15m) 1巣2成鳥2ヒナ
 1983.7.31 国中・飯尾川(標高10m) 5(幼鳥+成鳥)
 1983.8.1 阿波中央橋南詰西方(標高15m) 2
 

コウノトリ目 Order CICONIIFORMES
 サギ科 Family ARDEIDAE
2.ヨシゴイ Ixobrychus sinensis
 夏鳥。湿性草地・アシ原に生息する。少ない。開発により激減している。1982年には敷地で死体が発見された。
3.ミゾゴイ Gorsakius goisagi
  夏鳥。山地の渓流沿いの広葉樹の多いよく茂った林に生息。非常に少ない。
 1983.6.5 三谷南方山地の渓流(標高280m)1巣3卵1成鳥 ケヤキ
  大木の横枝に営巣し抱卵中
4.ゴイサギ Nycticorax nycticorax
  主に夜行性。河川の岸辺・水田等でカエル・魚などを捕食する。
5.アマサギ Bubulcus ibis
 乾性草地・畑で昆虫・クモ類を捕食する。
6.ダイサギ Egretta alba
 河川・湿地・水田等で小動物を捕食する。
7.チュウサギ Egretta intermedia
 河川・湿地・水田等で小動物を捕食する。
8.コサギ Egretta garzetta
 河川・湿地・水田等で小動物を捕食する。
9.アオサギ Ardea cinerea
 河川・湿地等で小動物を捕食する。少ない。
 1983.2.13 三谷南方山地の谷川(標高70m) 1
 

ガンカモ目 Order ANSERIFORMES
 ガンカモ科 Family ANATIDAE
10.マガモ Anas platyrhynchos
  冬鳥。河川と周辺の湿地に生息。
 1983.10.9 先須賀・吉野川(標高10m) 12
11.カルガモ Anas poecilorhyncha
  留鳥。河川と周辺の湿地に生息。開発により減少している。冬期には北方より渡来越冬するもので数が増える。
 1983.4.3 向麻山沿いの飯尾川(標高11m) 6
 1983.8.1 高白・江川(標高14m) 25
 1983.8.1 阿波中央橋南詰西方(標高15m) 8
12.ヒドリガモ Anas penelope
  冬鳥。河川等に生息。
 

ワシタカ目 Order FALCONIFORMES
 ワシタカ科 Family ACCIPITRIDAE
13.ハチクマ Pernis apivorus
  夏鳥。低山の林に生息。少ない。
 1983.7.31 三谷南方の山地(標高220m) 2
14.トビ Milvus migrans
  留鳥。河川・村落・農耕地の周辺に生息。付近の林で営巣・繁殖する。
15.ツミ Accipiter gularis
  山地の林に生息。非常に少ない。
 1983.7.31 三谷南方の山地(標高220m) 1 サシバを追い払う。
16.サシバ Butastur indicus
  夏鳥。低山の林に生息。
 ハヤブサ科 Family FALCONIDAE
17.チョウゲンボウ Falco tinnunculus
  冬鳥。平野部に生息。
 1983.11.13 知恵島 1♀ 停空飛翔
  キジ目 Order GALLIFORMES
 キジ科 Family PHASIANIDAE
18.コジュケイ Bambusicola thoracica
  留鳥。低山・山麓部に生息。
19.ヤマドリ Phasianus soemmerringii
  留鳥。山地の林に生息。多くない。
 1983.6.15 三谷南方の山地(標高280m)
  ♀1・幼鳥2+
 

ツル目 Order GRUIFORMES
 クイナ科 Family RALLIDAE
20.ヒクイナ Porzana fusca
  夏鳥。湿地・休耕田・水田に生息。少ない。
 1983.6.12 敷地(標高20m) 1巣6卵 休耕田の湿性草地
21.バン Gallinula chloropus
  留鳥。河川と周辺の湿性草地に生息。
 1983.4.3 向麻山沿いの飯尾川(標高11m) 7
 1983.6.12 敷地(標高20m) 1巣8卵 湿田の畔道に
 1983.8.1 高白・江川(標高14m) 5(幼鳥+成鳥)
 

チドリ目 Order CHARADRIIFORMES
 タマシギ科 Family ROSTRATULIDAE
22.タマシギ Rostratula benghalensis
  留鳥。湿地・湿田・水田に生息。多くない。
  繁殖期、夜間に♀がさえずる。
 1983.6.28 敷地 1 さえずり声
 チドリ科 Family CHARADRIIDAE
23.コチドリ Charadrius dubius
  河原に生息する。
24.イカルチドリ Charadrius placidus
  河原に生息する。
25.シロチドリ Charadrius alexandrius
  河原に生息する。
26.ムナグロ Pluvialis dominica
  旅鳥。湿地に生息。少ない。
 1983.10.9 先須賀・吉野川(標高10m) 1
 シギ科 Family SCOLOPACIDAE
27.アオアシシギ Tringa nebularia
  旅鳥。湿地に生息。少ない。
 1983.10.9 先須賀・吉野川(標高10m) 1
28.クサシギ Tringa ochropus
  冬鳥。川岸の湿地に生息
29.イソシギ Tringa hypoleucos
  冬鳥。主に河原に生息。
30.タシギ Gallinago gallinago
  冬鳥又は旅鳥。湿地・湿田等に生息。
 カモメ科 Family LARIDAE
31.セグロカモメ Larus argentatus
  冬鳥。吉野川流域に生息。
32.カモメ Larus canus
 冬鳥。吉野川流域に生息。
33.コアジサシ Sterna albifrons
  夏鳥。河川の水面上を停空飛翔し水中に飛び込んで魚を捕食する。
 1983.6.5 宮間・江川 1
 1983.6.8 敷地 3 水田上空を飛ぶ。
 

ハト目 Order COLUMBIFORMES
 ハト科 Family COLUMBIDAE
34.キジバト Streptopelia orientalis
  留鳥。平地から山地まで広く生息。
35.アオバト Sphenurus sieboldii
  よく茂った広葉樹の自然林に生息。少ない。
 1983.4.3 赤坂(標高200m) 2
 

ホトトギス目 Order CUCULIFORMES
 ホトトギス科 Family CUCULIDAE
36.カッコウ Cuculus canorus
 旅鳥。山地の明るい林や草原に生息。
 1983.6.5 三谷 1 さえずり声
37.ツツドリ Cuculus saturatus
  夏鳥。山地の林に生息し、センダイムシクイなどに托卵するといわれる。鴨島町で繁殖する可能性は少ない。
 1983.6.5 長戸 1 さえずり声
38.ホトトギス Cuculus policephalus
  夏鳥。山地の林に生息し、おもにウグイスに托卵するといわれる。
 

フクロウ目 Order STRIGIFORMES
 フクロウ科 Family STRIGIDAE
39.アオバズク Ninox scutulata
  夏鳥。山麓部や神社の森に生息し、大木・古木の天然の樹洞に営巣する。多くない。
 1983.6.28 敷地 1 さえずり声
 1983.7.23 三谷・八大龍王神社(標高30m) 1 エノキの枝にとまる。
40.フクロウ Strix uralensis
  留鳥。低山〜山麓部の大木・古木の多い林に生息。開発により極めて少なくなりつつある。
 1983.4.3 赤坂(標高200m) 1 さえずり声
 1983.6.5 敷地南方の山地 1 さえずり声
 1983.6.5 三谷・八木龍王神社(標高30m) 1幼鳥 クスノキ大木の枝にとまる。
 1983.6.9 長戸(標高440m) 2幼鳥
 

ヨタカ目 Order CAPRIMULGIFORMES
 ヨタカ科 Family CAPRIMULGIDAE
41.ヨタカ Caprimulgus indicus
  夏鳥。低山の明るい林・林縁部に生息。少ない。主に夜間活動する。
 1983.6.28 敷地南方の山地 1 鳴き声
 

アマツバメ目 Order APODIFORMES
 アマツバメ科 Family APODIDAE
42.アマツバメ Apus pacificus
  旅鳥として上空を通過して行く。
 

ブッポウソウ目 Order CORACIIFORMES
 カワセミ科 Family ALCEDINIDAE
43.カワセミ Alcedo atthis
  留鳥。流れのゆるやかな河川の岸辺にとまり、水中に飛び込んで魚を捕食する。コンクリート護岸のない土の岸に営巣するため、護岸工事により営巣地が失われつつある。
 

キツツキ目 Order PICIFORMES
 キツツキ科 Family PICIDAE
44.アオゲラ Picus awokera
  留鳥。山地の自然林に生息し、大木の枯木に嘴で穴を掘って営巣する。少ない。
 1983.6.15 三谷南方の山地(標高100m) 2 クヌギ林で。
 1983.11.23 三谷(標高30m) 1♀型
 人家横のカキの木の幹にとまる。
45.コゲラ Dendrocopos kizuki
  留鳥。山地の自然林に生息。
 

スズメ目 Order PASSERIFORMES
 ヒバリ科 Family ALAUDIDAE
46.ヒバリ Alauda arvensis
  留鳥。草地・農耕地・河原に生息
 ツバメ科 Family HIRUNDINIDAE
47.ツバメ Hirundo rustica
  夏鳥。人家等に営巣。春・秋には吉野川流域などの広いアシ原をねぐらとする。
48.コシアカツバメ Hirundo daurica
  夏鳥。コンクリート建物に営巣するが、鴨島町内で巣は発見されなかった。
 セキレイ科 Family MOTACILLIDAE
49.キセキレイ Motacilla cinerea
  留鳥。山地の渓流から平地の水辺までかなり広く生息。
50.ハクセキレイ Motacilla alba
  冬鳥。河原・草地・農耕地に生息。
51.セグロセキレイ Motacilla grandis
  留鳥。平地の水辺周辺に生息。
52.ビンズイ Anthus hodgsoni
  冬鳥または旅鳥。低山の明るいマツ林に生息。
53.タヒバリ Anthus spinoletta
  冬鳥。湿地・草地・農耕地に生息。
 サンショウクイ科 Family CAMPEPHAGIDAE
54.サンショウクイ Pericrocotus divaricatus
  夏鳥。高い木のある明るい林に生息。
 1983.6.5 三谷南方の山地(標高70m) 1♀・1♂ アカマツに造巣中
 ヒヨドリ科 Family PYCNONOTIDAE
55.ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis
  留鳥。明るい林に生息。冬期は北日本方面から渡来越冬するものが加わり
 多くなる。
 モズ科 Family LANIIDAE
56.モズ Lanius bucephalus
  留鳥。林縁部に生息。
 カワガラス科 Family CINCLIDAE
57.カワガラス Cinclus pallasii
  留鳥。山地の渓流に生息。少ない。
 1983.11.23 三谷南方山地の渓流 2
 1983.4.3 赤坂 2
 ミソサザイ科 Family TROGLODYTIDAE
58.ミソサザイ Troglodytes troglodytes
  山地の渓流沿いの林に生息。鴨島町内で繁殖する可能性もある。
 1983.4.3 三谷南方の山地(標高200m) 2 さえずり声
 1983.11.23 三谷南方の山地(標高300m) 1
 ヒタキ科 Family MUSCICAPIDAE
59.ルリビタキ Tarsiger cyanurus
  冬鳥。山地の広葉樹の多い林に生息。多くない。
60.ジョウビタキ Phoenicurus auroreus
  冬鳥。林縁部・人家周辺に生息。
61.トラツグミ Turdus dauma
  繁殖期は、よく茂った広葉樹の多い林に生息するが、繁殖期の観察例はなかった。
 1983.2.13 三谷(標高30m) 1
 1983.11.23 向麻山(標高20m) 1
62.シロハラ Turdus pallidus
  冬鳥。低山の広葉樹の多い林に生息。
63.ツグミ Turdus naumanni
  冬鳥。林縁部・農耕地・人家周辺に生息。
64.ヤブサメ Cettia squameiceps
  夏鳥。山地の低木層の発達した林に生息。
65.ウグイス Cettia diphone
  留鳥。山地のササやヤブの多い明るい林で繁殖し、冬期は人家付近にも現われる。
66.オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus
  夏鳥。平地の広いアシ原に生息。少ない。
 1983.6.5 阿波中央橋南詰の西方(標高15m) 1
67.センダイムシクイ Phylloscopus occipitalis
  夏鳥。山地の広葉樹の多い林に生息。落葉広葉樹の樹冠部で小動物を捕食する。
 1983.6.5 長戸(標高440m) 1巣4ヒナ2成鳥 給餌する
68.キクイタダキ Regulus regulus
  冬鳥。山地のアカマツの多い林に生息。
69.セッカ Cisticola juncidis
  留鳥。河川〜農耕地周辺の草地に生息。
70.キビタキ Ficedula narcissina
  夏鳥。山地の広葉樹の多いよく茂った自然林に生息。少ない。
 1983.6.15 三谷南方の山地(標高280m) 1 さえずり声
71.オオルリ Cyanoptila Cyanomelana
  夏鳥。山地の渓流沿いの林に生息。
72.コサメビタキ Muscicapa latirostris
  夏鳥。山地の広葉樹の多い自然林に生息。少ない。
 1983.6.5 三谷南方の山地(標高70m) 2
73.サンコチョウ Terpsiphone atrocaudata
  夏鳥。山地の広葉樹の多いよく茂った林に生息。少ない。
 1983.6.5 三谷南方山地(標高250m) 1♂・1♀
 1983.7.31 三谷南方山地1♀(標高100m) 1さえずり(標高150m)
 エナガ科 Family AEGITHALIDAE
74.エナガ Aegithalos caudatus
  留鳥。二次的な自然林に生息。
 シジュウカラ科 Family PARIDAE
75.ヒガラ Parus ater
  留鳥。山地の針葉樹の多い林に生息。
 1983.4.3 三谷南方の山地(標高320m) 2
 1983.4.3 三谷南方の山地(標高400m) 1 さえずり声
 1983.7.31 長戸(標高350m) 1 さえずり声
 1983.7.31 長戸(標高450m) 6± 幼鳥+成鳥
76.ヤマガラ Parus varius
  留鳥。広葉樹の多い林に生息
77.シジュウカラ Parus major
  留鳥。広葉樹の多い林に生息。
 メジロ科 Family ZOSTEROPIDAE
78.メジロ Zosterops japonica
  留鳥。常録広葉樹の多い林に生息。冬期は樹木の多い人家周辺にも現われる。
 ホオジロ科 Family EMBERIZIDAE
79.ホオジロ Emberiza cioides
  留鳥。平地から山地の林縁部に広く生息。
80.ホオアカ Emberiza fucata
  冬鳥。平地の草地・農耕地に生息。少ない。
81.カシラダカ Emberiza rustica
  冬鳥。林縁部に生息。
82.ミヤマホオジロ Emberiza elegans
  冬鳥。明るい林に生息。
83.アオジ Emberiza spodocephala
  冬鳥。明るい林・林縁部に生息。
84.クロジ Emberiza variabilis
  冬鳥。山地の林に生息。少ない。
 アトリ科 Family FRINGILLIDAE
85.カワラヒワ Carduelis sinica
  留地。平地から山地の林縁部に普通に生息。
86.マヒワ Carduelis spinus
 主に旅鳥として山地の林を通過する。
 1983.4.3 赤坂(標高200m) 20±
87.ウソ Pyrrhula pyrrhula
  旅鳥または冬鳥。山地のヤマザクラの多い自然林に生息。少ない。
 1983.2.13 三谷南方の山地(標高500m) 1 鳴き声
88.イカル Eophona personata
  留鳥。広葉樹の多い明るい林に生息。
89.シメ Coccothraustes coccothraustes
  冬鳥。平地から低山の林に生息。エノキ・ムクノキなどの木の実を食す。
 1983.2.9 西知恵島(標高17m) 3
 ハタオリドリ科 Family PLOCEIDAE
90.スズメ Passer montanus
  留鳥。人家・農耕地周辺に普通に生息。
 ムクドリ科 Family STURNIDAE
91.ムクドリ Sturnus cineraceus
  留鳥。人家・農耕地周辺に普通に生息。かつては大木の樹洞に営巣したが、現在は人家のすきまに営巣するようになった。
 カラス科 Family CORVIDAE
92.カケス Garrulus glandarius
  留鳥。山地の広葉樹の多い林に生息。
93.ハシボソガラス Corvus corone
  留鳥。平地の河原・農耕地周辺に生息。
94.ハシブトガラス Corvus macrorhynchos
  留鳥。平地から山地まで広く生息。
○ ドバト
  橋の下などに多くすみ、農耕地で採餌する。
 1983.8.1 阿波中央橋・橋げた(標高23m) 50+
 1983.10.10 高白(標高15m) 1巣2ヒナ 江川に架かる橋の橋げたに営巣。

 

参考文献
清棲幸保 1966:野鳥の事典 東京堂出版 p.19〜33
信州鳥類生態研究グループ 1977:長野県の野鳥―繁殖期の鳥類群集について―
 長野県林務部林政課:p.12〜14
羽田健三監修 1975:野鳥の生態と観察 築地書館


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