阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第37号
健康と農業との関連に関するアンケート調査結果について

農村医学班

  田上直彦・日下静代・吉本公宏・
  片岡晶子・高木伸幸・島村稔浩 ・
  蔭山哲夫1)

 私ども農村医学班は、総合学術調査に参加して、総合的な集団健康診断を行うとともに健康と農業に関するアンケート調査を実施した。アンケート調査のまとめの中から主な項目を抽出して報告する。まず、調査の対象は、松茂町内で主に農業を営んでいる男子93人、女子92人、合計185人について、平成2年7月31日より8月3日の4日間にわたって調査した。
 その性別、年齢別構成は表(1)のとおりである。これらの対象者の収入割合、農作業に従事する割合から見たのが表(2)、表(3)である。松茂町は甘藷、ダイコン、ナシ、レンコンの産地であり、圧倒的に専業農家が多い。

 表(4)、表(5)は健康増進、食事の嗜好についての調査である。健康増進についての調査で、身近なことで一番関心を持っているのは、男・女とも「健康」と答えたのが圧倒的に多い。健康増進のための実施事項では男子が「食事」「すいみん」「心のもち方」の順であり、女子が「心のもち方」「食事」「すいみん」となっており、関心の順位は違っているが、男女ともこの3項目に関心をもっている。

 また、年1回の受診については、男子53%、女子62%を希望している。次に農夫症の調査については表(6)に示すように何らかの症状があると答えたのは、男女とも肩こり、腰痛が圧倒的に多い。表(7)の採点をみてみると、対策、治療を要する人が男子44%、女子58%と大変多くなっており、疲労の積み重ねが病気の始まりの危険信号と考えなければならない。表(8)は、1日の仕事が終わった時点での疲れの自覚症状について調査したものである。1 のねむけとだるさの10項目のうち男子では、「横になりたい」44%「目がつかれる」30%、「足がだるい」23%となっており、女子では「横になりたい」41%「足がだるい」39%「目がつかれる」33%の順となっている。

 2 の注意集中の困難さを示す精神疲労では男女とも「一寸したことが思いだせない」「根気がなくなる」が多い。3 の局在した身体違和感では、男・女とも「腰痛」「肩こり」が多い。これは中腰、前かがみの作業が多いことに起因すると考えられる。表(9)表(10)については、慢性病についての調査であるが、男子では30%、女子で16%の人が何らかの慢性的な病気を持っている。その内容は「胃・十二指腸」「高血圧」が多い。表(11)は、自分の血圧の平常値を知っているかに対しては、男子が58%、女子が68%と女子の認識度が高い。
 表(12)は農業によると思われる中毒症状の経験の有無の調査では、男子38%、女子で35%が経験している。その症状は表(13)である。男子では「はき気」「頭痛」「頭重」「食欲の減退」、女子では「はき気」「頭痛」「下痢」の順である。その原因は表(14)のとおりであり、圧倒的に「服装、マスクなど防備不十分」が原因である。

 表(15)は健康診断の受診状況であるが、受診者は男子72%、女子86%と高いが、健康管理の第1条件である早期発見、早期治療のため、常に受診を呼びかけることが大切である。
 表(16)は健診の内容である。
 表(17)は健診を受けなかった人の理由について調査したもので、その第1位は男女とも「現在は健康だから」と自分の身体を過信しているが、自分の健康は自分で守るため、年1回の健診は必ず受けるようにしたいものである。
 表(18)は次の健診の機会があればに対しては男子88%、女子が91%が受けると答えている。
 最後に表(19)で農協への要望については圧倒的に「県に農協健診センターの設置」が多い。今厚生連・中央会において健診センター設置に向けて推進しており、近いうちに実現すると思う。

 以上が健康と農業との関連に関するアンケート調査であるが、慢性的病気の高血圧の人が23%おりながら、食事の嗜好として塩からいものが好きと答えた人が半数もある。健康と食生活は非常に密接な関係があり、今後、総合的な健診の機会を計画的に実施するとともに、食生活改善指導等、健康意識を高めるための健康教育の徹底を図っていくことが大切であると考えられる。
 今回の調査に当たり、全面的なご協力をいただいた松茂町農協の関係者の方々に対し厚くお礼申しあげます。

1)徳島県厚生農業協同組合連合会


徳島県立図書館