阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第38号
半田町農業従事者の健康状態について −その1.健康と農業の関連に関するアンケート調査結果−

農村医学調査班(四国農村医学会)
   蔭山哲夫※・田上直彦・日下静代
   島村稔浩・高木伸幸・岩田晴美
   片岡晶子・藤川一代・坂東貴子

健康と農業との関連に関するアンケート調査結果について
 私ども農村医学班は、総合学術調査に参加して、総合的な集団健康診断を行うとともに健康と農業に関するアンケート調査を実施した。
 アンケート調査のまとめの中から主な項目を抽出して報告する。
 まず、調査の対象は、半田町でおもに農業を営んでいる男子59人、女子59人、合計118人について平成3年7月30日より8月2日の4日間にわたって調査した。
 その性別、年齢別構成は表(1)のとおりである。

 これらの対象者の農業従事の年間割合は5割以上51人(43.2%)となる。又、年間収入に占める農業収入割合、5割以上は86人(72.9%)である。なお、家族数3人以上は、101人(85.6%)で、70以上は49家族65人であった。
 表(2)、(3)で、健康増進・嗜好についての調査である。

 健康増進についての調査で一番身近に関心を持っていることは男女とも「健康」であり、男子44人(75%)女子48人(81%)を占めており、実施内容では、男子が「睡眠を十分にとる」、次いで「食事に気を配っている」・「スポーツ等運動」であり、女子は「食事に気を配っている」、次いで「睡眼を十分にとる」となっている。
 年1回の健康診断については、男子29人(49%)、女子36人(61%)で女子の方が健診率が高い。
 働く農民に多い症状8項目の調査では表(4)に示すように、男女とも「肩こり」「腰痛」「夜間頻尿」の順となっている。

 表(4)の8症状について定められた基準により採点、評価してみると表(5)のようになる。総合点が2点以下で対策が必要としない人が、男子では、45.8%、女子では27.1%、何等かの対築を必要とする人は、男子で39.0%、女子では50.8%となっている。さらに治療を必要とする人は男子で15.2%、女子では22.1%であり、女子の要対策、要治療を合わせると72.9%にもなり、疲労の積み重ねが病気の始まりの危険信号と考えなければならない。

 表(6)は、1日の仕事が終わった時点での疲れの自覚症状について調査したものである。1 の眠気とだるさの10項目の内、男女とも「横になりたい」「目がつかれる」で、2 の注意力集中の困難さを示す精神疲労では、男女とも「ちょっとしたことが思い出せない」「根気がなくなる」で、3 の局在した身体違和感では、男子は「腰がいたい」「肩がこる」で、女子は、「肩がこる」「腰がいたい」の順になっており、農業特有の症状が現れている。

 表(7)、(8)は、慢性病についての調査である。が、男女とも28.8%の人が何等かの慢性的な病気をもっている。その内容は、「胃・十二指腸」「高血圧」「心臓病」等である。

 表(9)は、自分の血圧の平常値を知っているかに対しては、男子が64.4%、女子66.6%となり若干、女子の認識度が高い。

 表(10)は、農薬によると思われる中毒症状の経験の有無の調査で、男子13.5%、女子16.9%が経験している。その症状は、表(11)である。男子では、「頭痛」「はき気」、女子は「はき気」「頭重」「頭痛」となっている。

 表(12)の農薬中毒の原因は男子「服装・マスクの防備不十分」、女子「身体の具合いが悪かった」等となっている。

 表(13)は、今年になって健康診断を受けているかの状況であるが男子67.8%、女子83.1%とかなり高い受診率である。

 表(14)は健診の内容である。

 表(15)は健診を受けなかった人の理由について調査したもので、「現在は健康である」「忙しくて行けなかった」となっているが、自分の身体は、自分で管理するため、年1回の健診は必ず受けるようにしたいものである。最後に表(16)で「次の健診の機会があれば」との問いに対し、かなり高い受診希望がある。

 以上が、農家の健康を守るアンケート調査の結果であるが今後、総合的な健診の機会を計画的に実施することと、健康意識を高め健康教育の徹底を図っていくことが大切である。
 今回の調査に当たり、最後まで全面的なご協力をいただいた美馬郡農協の関係者の方々に対し厚くお礼申し上げます。

脚注 ※徳島県中央会(田上・日下)徳島県厚生連健康管理課(中央会を除く全員)


徳島県立図書館