阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第39号
三好町の方言

方言班  金沢浩生1)

1.はじめに
 三好町の方言は徳島県上郡(かみごおり)方言圏に属する。上郡は徳島県三好郡・美馬郡の平坦部全域である。この地域の語アクセントは昭和初年、金沢 治によって報告され、1960年ごろまでに地元徳島大学の宮城文雄、加藤信昭によって精査され、さらに金田一春彦、平山輝男ら中央の国語学者に臨地調査された。平山輝男はこの三好町型のアクセントを「京阪式IV型」と名付けた。また、地元の高等学校国語教師で方言研究家の森 重幸(1927生まれ)は三好郡方言の徹底的調査の目的もあって1976年から7カ年にわたって辻高等学校に勤務し、三加茂町の教職員住宅に入居して、休日等に研究調査に没頭し、徳島県のアクセント地図等を完成した。(図1,2参照)森は縁の深かったこの三好町総合調査の年である1992年10月に逝去した。健在なら積年の研究成果が誌上に発表されたであろうにまことに惜しまれてならない。
 今年の方言班は三好町の語アクセントと語彙、表現法を取り上げ、その概況を述べる。
2.語アクセント
 先人たちの着眼点を丹念に再調査した森 重幸の図を見てほしい。三好町とした欄は「池田型」と呼ばれる。今回小学生から老人層まで25人の人々を煩わせて調べさせてもらったが、特に表と差異は認められなかった。語アクセントは言語形成期に身について生涯変わらないとされる。テレビ、ラジオの普及によって、日本国中、共通語化が進み、聞き言葉としては東京語・大阪語等主要な土地のことばなら全部理解できるようになったし、県外人には共通語で話して聞かせることさえできるようになった。しかし生活語としては、老いも若きも親から伝えられた通りの地方語を用いている。
 三好町の人々は自分たちの用いる語アクセントは麻植郡以東とは違っている、という意識は希薄である。豪快な池田高校野球部の蔦文也監督のインタビューは全国の人々に喜ばれ、徳島県民はそれを聞いて胸を張ったものだが、蔦監督は阿波弁まるだしで飾らないとは言うが、彼のアクセントは池田型だとは言わない。三好町の人々は自分たちのアクセントが徳島市型とは別の型だとは意識していない。これは語彙面では東西の差異は少ないこともあってそう感じているのである。

◎ 三好町(徳島県上郡地域)アクセントの特徴
  1  文アクセントでは、文頭部が高いことが多い。これは増川・光清地区において顕著であるが、平坦部にも見られる傾向である。
  ○ トイツメラレタラ ワカランヨーニナル。
  ○ ハヨー コシラエセナンダラ マタ オソーニナッテカラ ヨワルゾ。
  ○ アリガトゴザイマシタ。
  2  漸高型アクセントが多い。
 ある種の語や複合語、二語を連体修飾の「の」でつなぐ場合、漸高型とでもいうべきアクセントになる。
  ○ トーキョーエ イク。(東京へ行く)
  ○ アタマガ イタイ。(頭が痛い)
  ○ ハラクダシ シヨルンジャワイ。(下痢しているんだよ)
  ○ ヤマンナカジャキンナ。(山の中だからね)
   その他 みちぶち、草抜き、買い物、ウナギ釣り、谷ぐち、まったけとりなどは漸高型を示す。
3.語 彙
  あ 行
あずない (形) 幼稚だ  「あの子は年の割にまだあずない」
あずる  (ラ五)てこずる 「あの仕事にはあずりかやった」
あだつ  (ラ五)はかどる、容器に収容しきれる 「そんなものごではあだたんでよ」
あんだいな(形態)不安な  「あんだいなとこがあったら今のうちに言うときないよ」
いける  (カ下一)埋める 「牛蒡は掘って来ていけてあるきんな」
うさる  (ラ五)流行が廃れる 「しといきやっとったきんど、もううさったわなー」
おかもいなして(挨拶)どうかお構いなく 「おかもいなしてつかはれよ」
おじゃみ     お手玉  「おじゃみともいいし、おてだまとも言うわいの」
おどろく (カ五)目を覚ます 「ゆうべも2時におどろいた」
おぶける (カ下一)驚く  「わたしゃーまことおぶけた」
おみいさん    雑炊   「ごはんがふるいきん、おみいさんにしたんでよ」
おんでんがえし  復讐、しかえし 「前にやられとるきんなー。おんでんがえしじゃ」

  か 行
がいに  (副) ひどく、激しく 「がいに雨が降って来たなー」
かがま      膝    「だいぶ深いでよ。かがまぐらいありそうなぞ」
かつれる (ア下一)飢える 「あの犬はかつれとったんか知らん よー食うなー」
かまびしい(形) 騒がしい 「よーけ居ってかまびしいこっちゃ」
         貧窮だ  「ご飯ぐらいゆっくり食べー。かまびしげなこと言うな」
かもい      専門分野 「そりゃーおまはんのかもいじゃ」
ぎすい  (形) 性質や顔付きがきつい 「あの人はちょっとぎすいとこがある」
きどい  (形) じれったい、まだるっこい 「きどくそーて見て居れん」
くいる  (ラ五)煙る、くすぶる 「まどー明けはい。くいんりょるわ」
けんたい     当然、あたりまえ 「うちの土地をけんたいで通られたら困る」
ごじゃ      でたらめ、無理 「ごじゃー言いなはんな。これでええんでっそよ」
こずく  (カ五)咳く   「じーやん よーこずっきょるなー」
こっくむてんに(副)わきめもふらず 「孫はそばでこっくむてんに遊んびょる」

  さ 行
さこ       谷間   「あしこのさこへ水がでてくるんじゃ」
さどい  (形) すばしこい 「あと(あいつ)はさどいぞ」
ざれる  (ラ下一)崩壊する 「台風でざれたんでわ」「つえる」とも
しときり (副) ひところ、一時 「しきとり よーはやっとった」
しゃっきんじゃ(形動)大丈夫だ、平気だ 「10年してもしゃっきんじゃ」
ずいろ      潜水   「ずいろに入って取って来い」
ずつない (形) 苦しい、つらい 「風邪ひいてずつのうておれん」
すぼき      こむら、ふくらはぎ 「すぼきにみがいった」
せんぐり (副) 次々に  「せんぐりに入ってくる」
そろ       土箕   「そろでじんぞくをすくう」

  た 行
ただしに (副) むやみに 「ただしに怒って、わけがわからんのですわ」
たっすい (形) 馬鹿らしい 「たっすいことやめとけ」
ちゃちー     インチキ、ずるいこと 「ちゃちーしたらいかんのでよ」
つくなむ (マ五)しゃがむ 「腹が痛うてちょっとこまつくなんどったんよ」
つべ       尻、底部 「籠のつべ、まるこーにしてなー」
てだこ      いたずら、いらぬこと 「てだこすなって言いよんだろーが」
てんまい (形) うまくいった能率がいい、好都合だ
      「てんまいっちゅーのはな。いっぺんによーけすることを言うんでわ」
      「よーけ取れたことを、『てんもうとれたのー』 って言うこともありますわ」どちらえか(挨拶)どういたしまして、こちらこそ有り難うございました

  な 行
なげあし     正座せずに足を前の方に投げ出すこと 「怪我しとるきん、なげあしでごめんなしてよ」
〜なる  (ラ五語尾)上からの権威で従わざるをえないなりゆきになること
            召集なる、送還なる、転属なる、課税なる・・・
ねっから (副) 根から、本心から 「あれ、わたし、ねっから好かんのですわ」
ねんご      自慢、うぬぼれ 「ねんごばっかり言うてなかなか仕事せん」

  は 行
はっさい     おてんば 「はっさいって言われよったきんど、娘はんらしんなった」はっしゃぐ(ガ五)興に入って浮かれる 「あいつ、はっしゃいどったのー」
         桶などが乾いて緩む 「にないがはっしゃいでしもーたがいや」
ひなず      皮肉、こきおろし 「そう、ひなず言わんと、協力してつかはれだ」
ひんず      余分   「部品はひんずに1つつけとけよ」
へらこい (形) ずるい  「いかなへらこいやっちゃのー」
ほれ       馬鹿   「どぼれ」「くそぼれ」とも言い、男子相互の親密さを
表す罵詈語としても用いられる。
ほんけ      本当   「冗談でなしに、ほんけ、行くんか」

  ま 行
まがる  (ラ五)邪魔になる 「まがるきん、のいとりで、はい」
まくれる (ラ下一)落ちる、崩れる 「坂からまくれたんですわ」
めげる  (ガ下一)壊れる 「ほーんなはんな。めげてしまうでないで」
ものご      容器   「乾いてすむきん、ものごにいれときで」
ものごと     ひそひそ話 「私の前でものごとばっかり言うんでよ。感じ悪い」
もぶれる (ラ下一)まみれる、じゃれる、まといつく 「もぶれなはんな。暑いきん」

  や 行
やにこい (形) ちゃちだ、すぐ壊れる、しまらない 「保証人が、やにこいけんど、こらえよ」
 三好町の方言語彙は、徳島県全域と共通のものがほとんどである。細かく見れば、阿波上郡地区として美馬郡と共通のものが多く、それはまた讃岐方言とも共通となっている。今回調査に協力して戴いたのは年配の方が多かったし、またそれらの方々は私に出来るだけ古い方言を聞かせてくださろうと配慮されたので、古風な表現が多かったと思う。
4.表 現
 1 文末詞から見た表現
 三好・美馬両郡の平坦部は徳島県上郡(かみごおり)方言圏に属するが、三好にあって美馬にないのが、文末詞「イナ、イノ、イヤ」と、女性の優しい命令の文末詞「デ」である。
 (1) 文末詞「イナ、イノ、イヤ」
 中国地方、四国では讃岐に広く行われているこの文末詞は、徳島県では三好郡で行われているだけである。
 1  動詞の命令形や命令を表す文末詞について、意味を強めたり、親しさ、冷たさ等の感情を込める。また、勧誘や推量表現にも付く。
  ○オマエガ 行ケイヤ。
  ○チョット コッチー 来デイナ。(女性)
  ○エカゲンニ 泣ケイヤ。(ほどほどに泣けよ)
  ○イッショニ 行コイナ。(いっしょに行こうよ)
  ○ソコニ アロガイヤ。(そこにあるだろう)
 2  疑問文の末尾(省略した形を含む)に付けて、いろいろな感情を込める。
  ○ソレ ナニーヤ。
  ○ナニガ・・イナ。(何がどうしたって?)
 3  相手からの質問に答えるとき、名詞等に付いて、「〜だよ」という叙述性を持たせる。この場合「イヤ」は使わない。
  ○山イナ。(山だよ)
  ○ソーイナ。(そうだよ)
  ○今カラ・・イノ。(今からだよ)
 4  他の文末詞に付いて、親しさ等、いろいろな情感を添える。
  カイナ、ガイナ、ゾイナ、ワイナ、デイナ(〜ノ、〜ヤもある)
 (2) 文末詞、女性の命令「デ」
 これは美馬郡でも半田町では少し行われているが、中国や四国の隣県では行われていない。女性が身内や親しい人に対して、優しく勧め促す場合に用いる。
  ○ココエ 置イトキデ。(ここへ置いておきなさい)
  ○シャンシャン 出シデ。(くずくずせずに早くお出し)
  「ナ」に付くと禁止になる。
  ○ソンナコト シナデ。(そんなことするもんじゃありません)
強調するときには「早く」を感じさせる「ハイ」が付く。
  ○コッチー キデ ハイ。(いっちへ来なさい、早く。)
 (3) その他
 丁寧な疑問「デ」は、阿波方言の代表格であるが、三好地方では、これに他の文末詞が熟合した形が多く用いられる。「デカ」「デワ」「デヨ」「デゾ」
 また、下記のような文末詞が相当の頻度で使われていた。よく確認したい。
 ・ゼ ○アルンゼ、アシコニワ…。
 ・ダ ○ウチノダ、ハンダエ イトル イモトワダ…。(文節ごとに付く)
 ・ヨ ○タコ ヨー アガルヨ。(凧はよく揚がるよ)老男
 ・ガエ○イッペンワ カカルンダロガエ、アレワ。(一度は罹るんだろう、あれは)
 2 接続助詞から見た三好ことば
 もう一つ、上郡(かみごおり)ことばを特徴づけるのは、原因、理由を表す接続助詞「キン」「キニ」である。
 ○モドレナンダンデヨ、トオイキン。(戻れなかったんですよ、遠いから)
 ○ヨーケ ハイルキニ イソガシーワナー。(客がたくさん入っているから忙しいよね。)
 「キニ」「ケニ」はより古風な言い方である。「キン」「キニ」「ケニ」の周辺に「ホダキンド」「ホダキニ」「ホナケニ」がある。
 また、原因、理由を表す古風な言い方として、「カラ」「カラニ」が用いられている。
 ○カガマガ 痛ウテカラニ ヨワットンジャ。(膝が痛くて困っているんだ)
5.総 括
 期間中、さらに期間外にも、三好町当局、ならびに町民のみなさんから賜ったご厚意はたいへんなもので、感謝感激のほかない。しかるに非力の身をもって、わずかな期間、少しばかり聞かせていただいただけでは、広汎にして深遠な方言の世界はなかなか記述できない。誠に申し訳ないしだいである。
 方言を大きくとらえると、瑣細な差異など取るにたりないとも言えるが、わたしはやはりその土地の、隣の町村とは違った「ものいい」について語りたいと思う。また、お教えいただいた具体的な文を大事にしたいと考えてこの報告を記述している。
 予定の調査期間を終えて、わたしは三好ことばの特徴は「〜イナことば」と「漸高アクセント」に尽きると断じたい。
 それと四国の「へそ」と呼ばれ、他の三県と境を接した地方に住む三好の人々は、区画とか、行政とか、境とかの枠に何ら拘泥せず、同じ四国の人として、本当に仲良く助け合って来たことを実感した。「讃岐おとこと阿波おんな」といって、阿波の人は讃岐の男性を讃え、嫁入りする女性も多かった。商売をするにも商品は讃岐の卸屋から仕入れた。こんな歴史の中に生きている三好町の人達は、讃岐のことをよく知っている。わたしが増川の方に讃岐弁のことを尋ねたら、「讃岐のことばはやりこいでよ。『ちょっとは財田へも来まへよ』ってな…」とまねしてくれた。その方が何げなく思い出してくれた例文が、母の実家のおばあさんのかけて呉れたことばそのものであったことに私は感動した。
 伊予の新宮へも行った。そこでは郷土史研究家の石川 満先生に増川でお聞きした讃岐弁を新宮流に翻訳して戴いた。先生は「そうだね。『ちょっと新宮へもおいでなよ』 かなあ」と言われた。境の内と外では何もかもが違い、境を挟んで緊張や対立すらあるのではないか、などという感じを持っていた自分の先入観、偏見を恥じて、「ちょっとは讃岐へもきまへよ」「たまには新宮へもおいでなよ」と何回もつぶやいてみた。「阿波へもちょっと来でえよ」と三好町の人達は昔も今も隣人たちと親しく付き合ってきたのである。

参 考
 次の掲げる会話は、文化庁が1981年に実施した全国方言緊急調査に用いた場面設定の会話の要領に基づいて平成4年8月7日に、三好町新町 堀 坂治氏宅で収録したものである。
 (話し手)堀 坂治 大正12年1月12日生まれ
      堀 清子 大正14年11月14日生まれ
(1) 見送り
夫  アメガ フリソーナノ1)ー。カッパ ドコニ アルンゾ。
    雨が降りそうだなあ。合羽はどこにあるんだい。
妻  アマガッパ ココエ オイトルンデ2)ヨ。ドコイ イクンエ3)。
    雨合羽、ここに置いてあるわよ。どこへ行くの。
夫  カワエ サカナツリニ イテクルワ。
    川へ魚釣りに行って来るよ。
妻  コンナニ テンキガ ワルイノニ イクンデカ。
    こんなに天気が悪いのに行くの。
夫  オー。アメガ フンリョル トキノホーガ ヨケ ツレルッテ ユーキンノー。
    ああ。雨が降っている時のほうがたくさん釣れるって言うからねー。
妻  オーアメガ フランウチニ モンテキデ4)ーヨ。
    大雨が降らないうちに帰って来なさいね。
夫  オー。デキルダケ ハヤメニ モドルワ5)イヤ。
    ああ。できるだけ早めに帰るよ。
妻  アメガ フッタラ イシガ スベルジャキ6)ン キーツケデヨー。
    雨が降ったら石が滑るんだから気をつけなさいね。
夫  ナレトル トコロジャキン シンパイ イランワイヤ。
    慣れている所だから心配はいらないよ。

1)三好町方言の文末詞は「ナー」を本体とする。男子が同等以下に対する場合は「ナー」より 待遇度の低い「ノー」ともなる。
2)「デヨ」は「デカ」「デゾ」などとともに特色ある阿波の文末詞で丁寧語。基本形の「デ」 に文末詞「ヨ」,「カ」などがついたもの。
3)「エ」は文末詞で、やや丁寧な疑問。
4)「デ」は、三好郡の女子の特色ある文末詞で、優しい命令。文末詞「ヨ」等と熟合する。
5)「ワイヤ」は「ワイナ」や「ワイノ」に比べてややぞんざいな言い方。この場合は妻に対 する親密さを表す。
6)「キン」は阿波上郡の特色ある接続助詞で理由を表す。下郡では、「ケン」となる。

(2) 迎え
夫  イマ モ1)ンタゾー。
    今、帰ったよ。
妻  モンタデカ。
    帰ったの。
夫  ガ2)イーニ フッテ ヌレタワイヤ。
    ひどい降って濡れたよ。
妻  ヨーケ ツレタデカ。
    たくさん釣れたの。
夫  マー ミテミー。ワンリャイ ツレタゾー。
    まあ見てみろよ。割合釣れたよ。
妻  マー ヨーケ ツレトルデ3)ー。オーキーノガ オルナ。
    まあ、たくさん釣れているじゃないの。大きいのが居るね。
夫  ミズガ チョット デトッテ コンナニ ツレタワ。
    水が少し出ていてこんなに釣れたよ。
妻  フロ ワイトルキン ハヨー ハイリデヨ。
    風呂が沸いているから早く入りなさいな。
夫  オー。コノ サカナ クサランウチニ リョーリ シトイテクレヨー。
    ああ。この魚、腐らぬうちに料理しておいてくれよ。

1)「モンタ」は「戻った」の音便。
2)「ガイニ」は程度の副詞。「ガーイニ」と延ばして強調している。
3)「デー」は丁寧な疑問の文末詞、この場合は反問の形で強調している。

(3) 病気見舞い
A コンニチワ。ハナシニキキャー ココノ オヤッサン、タオレタツテ ユーデナ
  こんにちわ。話に聞いたら ここの おやじさん、倒れたって言うじゃありませ
  ナイデカ。コマッタナー。ドンナ グワイデヨ。
  せんか。こまったねえ。どんな具合ですか。
B イソカシーノニ ミマイニキテクレタンエ1)。
  忙しいのに見舞いに来てくれたの。
A ドーナッタンデヨ。マエカラ ケツアツ タカカッタンデ2)カイ。
  どうなったんですか。前から血圧高かったんですか。
B マー コナイダウチ ハタケシヨッタノニ キューニ セコーナッテ タオレソー
  まあ、このあいだから畑をしていたのに(今日)急に苦しくなって倒れそうになっ
  ニ ナッタンヨ。ホンデ ビョーインエ イテ テンテキシテ イマ ダイブン
  たんだ。それで病院へ行って点滴して今だいぶ良くなって帰ってきて寝ているん
  ヨーナッテ モンテキテ ネヨルンヨ。
  ですよ。
A アー ホーデカ。ホリャー ヨワッタナー。シズカニシテ ヨージョーシヨッタ
  ああ、そうですか。そりゃー困ったね。  静かにして  養生していたら直る
  ラ ナオルワイナ。
  よ。
B エー。ハヨー キガツイテ ヨカッタワイナ。イソガシーノニ スマンナ。
  ええ、早く気がついてよかったよ。忙しいのにすまないね。
A ムリセント ユックリ ヨージョーシナハレ。ツネニ ヨー ハタライトルンジャ
  無理しないでゆっくりと養生しなさい。常によく働いていたんだから。
  キン。ソノウチニ ヨー ナルワイナ。オダイジニ。
  そのうちよくなるよ。お大事に。
B アリガトーゴザイマス。オカエッタラ ミナハンニ ヨロシューニ ユーテナー。
  ありがとうございます。お帰ったら皆さんによろしく言ってくださいね。

 1)「エ」は女性の用いる疑問の文末詞。
 2)「デカイ」は対等の人に対するやや丁寧な疑問。

 今回の調査に当たって、ご教示いただいた方々の芳名を掲げて感謝の意を表する。
秋田夫紗子 中ノ段 大正15生
池本 長治 西 原 〃 6
大谷 武義 天 神 明治45
大西 タガ 小川谷 〃 43
末内 鶴一 東 山 大正4
高橋 多蔵 足 代 明治44
竹内 虎吉 内 野 〃 36
竹内マサエ  〃  〃 41
谷藤 サノ 山 口 〃 36
戸沢キクエ 増 川 〃 43
戸沢裕一郎  〃  昭和9
中川 明人 光 北 昭和24
中川ハナエ 増 川 明治42
藤枝 義明 中 屋 大正6
堀  坂治 新 町 〃 12
堀  清子  〃  〃 14
秋田 唯夫 公民館長
秋田 道雄 町史編集室
関口 由美   〃
横関喜八郎 給食センター所長
中川裕美子 昼間小学校 2年
西岡 泰人   〃   4年
下岡 宏明 昼間小学校 5年
中川 達輝   〃   〃
近藤 有希   〃   〃
藤川 瑞穂   〃   〃
中川 陽子   〃   6年
玉木 聖吾   〃   〃
正木和乙子   〃   〃

参考文献
 「徳島県百科事典」(徳島新聞社)阿波言葉の辞典(金沢 治著)香川県方言辞典(近石泰秋著) 講座方言学 中国・四国地方の方言(国書刊行会)瀬戸内方言辞典(藤原与一著)


徳島県立図書館